動物園事故から感じる飼育者と動物の安全について
こんにちは。
動物に関する悲しいニュースが報道されましたね。
過去に大型の動物による飼育者への被害は何度も耳にしましたが、その度心を痛めます。
まずは亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。
さて、今回ニュースに上がった「サイ」ですが、大型の草食獣です。
「草食獣だから危険はないのでは?」と感じる方もいらっしゃると思いますが、肉食だとか草食だとかは全く関係ありません。
人と動物と接することには、やはり危険が伴います。それは普段馴れ親しんだ犬猫も同じです。
動物飼育の現場では、飼育する動物に接する方法が大きく2つに分かれます。
直接飼育と間接飼育は、それぞれメリットデメリットがあり今回の痛ましい事故の場合、ニュースに上がっていた映像から間接飼育ではないかと想像できました。
直接飼育
直接飼育は、対象の動物に直接触れ管理をすることが可能な飼育の方法を指します。
メリット
- 同じ環境に飼育者が立ち、直に動物と触れる直接飼育では飼育動物への細かなケアーが可能となります。
- 怪我や病気など、対象動物に医学的な治療や処置が必要な場合に、直接出来る
デメリット
- 飼育動物からの攻撃的行動があった場合、身を守る術が少なく直接的に攻撃を受ける可能性が間接飼育よりも高い
間接飼育
ゾウやライオン、今回ニュースで挙がったサイなどの大型、もしくは危険の伴う猛獣を飼育する際に、直接動物に接することなく、柵越しに対応する飼育方法
メリット
- 動物から飼育者に対する攻撃行動を、直接受けないようにすることが可能
デメリット
- 直接動物に触れるのが困難なため、医療行為の際は難しい
このように、動物の種類により直接または間接的に飼育員は動物と関わり,動物を飼育管理しています。
もちろん、直接動物に触れることが出来る直接飼育の方が細かなケアーが可能ではと感じますが、現実問題難しいのです。
調教により得る人の安全
では、イルカの場合はどうなっているのか。
イルカの場合、ある意味間接飼育であり直接飼育でもあります。
その理由としては
- 水中と陸上で生活エリアが分かれている。
- 調教内容によっては水中に飼育者が入る直接飼育と似た環境が発生する。
こうした特殊な環境であるため、ほとんどのことを調教に頼ります。
例を挙げると以下の通り
- 飼育スペースの出入りは合図により行う。
- 採血、検温などの医療行為は種目化し、調教により行う。
- 餌をあげる際、摂餌直前まで口を開けさせない。
- 保定する際、水陸問わず落ち着いている態度は褒める。
様々なことに気をつけていても、事故は起こる可能性があります。
実際、現役時代はとても怖い思いもしました。
調教により得る動物の安全
人間側にメリットが多いように感じますが、実際には管理されている動物にもメリットは多いです。
- 医療行為の場合、これから自分(動物)が何をされるのかが理解できる。
- そうした環境において、動物側に拒否権があり無理矢理には行われない。
- 行動すれば強化子が出現し、動物にメリットが生じる。(ご褒美獲得)
調教において動物が「合図に反応しない」という現象を度々目にするが、これはその指示に対して動物が拒否をすることが可能ということであり、協力する気があるなら合図に反応するだろうという考え方。
今回のケース
ニュースにあったサイの飼育スペースには幅30cm間隔の柵が設置されていました。
この映像から間接飼育であると考えます。
飼育員はサイの治療に用いる軟膏を手にしていたということですので、何らかの傷のケアーを目的として柵に近づき、サイから攻撃を受けたものだとされます。
こちらは浜松市動物園でのゾウの採血の様子です。
柵越しに自ら顔を押し当て、耳を飼育者へ預けて採血に協力しています。
動物に関わる方々には、くれぐれもご自身の安全と動物の安全を確保してほしいと心から思います。
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